歯の矯正の治療期間はどれくらい? 治療期間が長くなる理由も解説
矯正歯科アラインクチュール名古屋栄院の院長、インビザラインファカルティ(公認指導医)の竹内敬輔です。今回は矯正歯科治療において特に気になる治療期間について、また治療期間が長くなる理由について解説していきます。
歯科矯正治療における期間の目安
歯科矯正治療は開始する時期や治療の内容から早期矯正(1期治療)、本格矯正(2期治療)、成人矯正の3つに分けられます。
早期矯正(1期治療)における治療期間の目安
早期矯正(1期治療)とは、6歳~10歳ごろの混合歯列期において矯正力を顎顔面や歯へ直接作用させ積極的に形態的、機能的改善をはかり、成長発育の過程の中で後続永久歯の咬合育成に寄与しようとするものです。
早期矯正の動的治療期間の目安:1年~1年6か月
※動的治療期間とは実際に矯正力を顎顔面や歯へ直接作用させる期間を言います。症状または使用する装置によって実際の治療期間は異なる場合があります。
本格矯正(2期治療)における治療期間の目安
本格矯正(2期治療)とは永久歯咬合の不正に対する広範囲矯正治療を指し、ほとんどの永久歯をできるだけ理想に近い状態にかつ上下顎歯槽骨頂上(またはボーンハウジング内)に排列し、正常咬合を獲得する矯正治療を本格矯正と呼びます。この広範囲矯正治療とは、一般にマルチブラケット装置(ワイヤー矯正装置)やインビザラインをはじめとするマウスピース型矯正装置が使用され、10歳~15歳ごろで若干の潜在成長能(growth potential )を残している時期に行います。
本格矯正の動的治療期間の目安:1年~1年6か月
※動的治療期間とは実際に矯正力を顎顔面や歯へ直接作用させる期間を言います。症状または使用する装置によって実際の治療期間は異なる場合があります。
保定治療期間の目安:1~2年
成人矯正における治療期間の目安
すべての永久歯をできるだけ理想に近い状態にかつ上下顎歯槽骨頂上(またはボーンハウジング内)に排列し、正常咬合を獲得する矯正治療を本格矯正と呼びます。この広範囲矯正治療とは、一般にマルチブラケット装置(ワイヤー矯正装置)やインビザラインをはじめとするアライナー装置(マウスピース型矯正装置)が使用されます。
近年、歯科医学の発展により歯科矯正の分野では成人に対してもより良い口腔環境や審美的改善を求め、積極的に矯正治療を施す傾向にあります。しかしながら、成人矯正では若年者を対象とした矯正治療とは異なった見地で診断をし、治療目的を明確にしたうえで治療方針を立て矯正治療にあたる必要性があると考えます。
成人では、成長発育の旺盛な小児や若年者とは異なり成長発育は完了し、むしろ増齢的な退行性組織変化を基調とした改造現象が主体となっているため、矯正治療に際しては歯の移動に対する生体組織の反応や、矯正治療の新しい環境への生体組織の適応能力などが低下していることを考慮すべきと考えます。
成人矯正の動的治療期間の目安:1年~3年
※動的治療期間とは実際に矯正力を顎顔面や歯へ直接作用させる期間を言います。症状または使用する装置によって実際の治療期間は異なる場合があります。
保定治療期間の目安:1~2年
部分矯正と全顎矯正(全体矯正)の違い
部分矯正は、全体の矯正が必要ない場合や、軽度の歯並びの乱れを修正したい場合に特定の歯や数本の歯だけだけを動かす矯正方法のことです。マルチブラケット装置(ワイヤー矯正装置)やインビザラインをはじめとするアライナー装置(マウスピース型矯正装置)それぞれで部分矯正を行うことが可能です。
部分矯正の動的治療期間の目安:3か月~12か月程度で気になる部分だけを比較的短期間で矯正することができます
歯科矯正治療において治療の期間が変わる主な理由
歯科矯正治療にかかる期間はあくまでも目安であり、症例の難易度や抜歯の有無などで治療期間は異なります。また、インビザラインをはじめとするマウスピース矯正では装置の装着時間によっても治療期間は異なります。
症例の難易度で異なる治療期間
症例の難易度とは、不正咬合の種類や状態によって決まってきます。
不正咬合とは
歯がふぞろいだったり、上下のアゴの歯ならびがお互いにちゃんと噛み合わない状態を、専門的には「不正咬合」と言い大きく次の4つに分類されます。
1)個々の歯の位置・状態の異常
2)歯列弓形態の異常
3)上下歯列弓関係の不正
4)先天性異常による咬合異常
とくに3)上下歯列弓関係の不正は以下のA~Fに分類されます。
A.上顎前突(出っ歯)
B.下顎前突(受け口)
C.過蓋咬合(噛み合わせが深い)
D.開咬(前歯が噛み合わない)
E.正中線の不一致(上下の真ん中がズレている)
F.臼歯交叉咬合(奥歯の噛み合わせが逆)
これらA~Fを含む不正咬合では難易度の高い症例となり治療期間は長くかかります。
抜歯の有無で異なる治療期間
歯科矯正治療を行う際には、マルチブラケット装置(ワイヤー矯正)であろうとインビザラインをはじめとするアライナー装置(マウスピース矯正)であろうと何本かを抜歯するという方法が選択される場合があります。実際にはどのような場合に抜歯の必要性がでてくるのでしょうか。これにはアーチレングスディスクレパンシーという考え方を知る必要があります。
アーチレングスディスクレパンシーとは -arch length discrepancy-
一側の第一大臼歯の近心面から他側の第一大臼歯の近心面間において歯が排列できる歯槽基底部の長さであるアベイラブルスペースと、片側の第二小臼歯から対側の第二小臼歯の歯冠近遠心幅径の総和であるリクワイアードスペースとの差を言います。
アーチレングスディスクレパンシーが大きいと
アーチレングスディスクレパンシーが小さい場合には拡大やIPRといった方法で抜歯をすることなく解消はできます。しかし、アーチレングスディスクレパンシーが大きくなるにつれ抜歯の必要性は高まります。
この方法について詳しく知りたい方は下記のコラムをお読みください。
アーチレングスディスクレパンシーが大きい抜歯矯正では治療期間は短くなる
1本1本の歯冠幅径(歯の大きさ)が大きい重度の叢生や前歯が大きく唇側傾斜している歯性の前突などの症状の場合には、リクワイアードスペースが大きくなりアーチレングスディスクレパンシーも大きくなります。アーチレングスディスクレパンシーが大きければ大きいほど抜歯をしたスペースはすぐに埋まりやすいと言えますので矯正治療の期間は短くなります。
アーチレングスディスクレパンシーが小さい抜歯矯正では治療期間は長くなる
一方で、1本1本の歯冠幅径(歯の大きさ)がそこまで大きくない軽度の叢生や前歯の唇側傾斜が小さい場合に抜歯矯正を選択した場場合などアーチレングスディスクレパンシーが小さいのに抜歯をしてしまえば、抜歯したスペースが余ってしまい、スペースを閉じるのが困難になり矯正治療の期間は長くなるといえます。
装置の装着時間で異なる治療期間
一般的にマルチブラケット装置(ワイヤー矯正)は固定式(接着式)であるため取り外しが不可能で24時間にわたって矯正力が持続的にかけられますが、インビザラインに代表されるアライナー装置(マウスピース矯正)は可撤式であるため取り外しが可能です。
取り外しできることは大きなメリットである反面デメリットになることも?!
インビザラインに代表されるマウスピース矯正では、アライナー装置と呼ばれるマウスピース型矯正装置を装着し、ひとつひとつの装置で段階的に歯の移動を行います。つまり、すべてのマウスピース型矯正装置は僅かずつ形状がが異なっており、歯科医師の定める装着時間を守って順番に進めていかなければ次の段階の装置に進んだ時にぴったりとはまらずにズレが生じます。このズレが大きくなればこれを補正するため新たに設計しなおしたマウスピース型矯正装置が必要となり。補正の度合いによって延長期間が必要になります。
担当矯正医で期間は変わる
実はここがもっとも治療期間を左右する要素かもしれません。矯正を専門にしている「矯正医」であれば治療前に適切な診断を行い、診断に基づいた矯正治療計画を立て、コンサルテーションにて分かりやすく、メリット及びデメリットについても患者サイドへ伝えるという一連の工程を踏んだのち治療契約を結ぶという流れになります。しかし、このような流れを踏まず、適切な診断や治療計画の説明や同意が得られないまま矯正治療を契約しまうというケースが多く見受けられます。
セカンドオピニオンは必ず受けましょう!
矯正を専門にしている「矯正医」であっても、学んできた環境やその後の経験によって治療の計画や手法には差異が生じます。この最たるものが、マルチブラケット装置(ワイヤー矯正装置)とインビザラインをはじめとするアライナー装置(マウスピース型矯正装置)という大きく二派です。とくにマウスピース矯正では、アライナー装置の設計を行う矯正医の経験によって治療計画は異なるので注意が必要です。
アライナー矯正をご検討の方は、一般社団法人アライナー矯正認証協会(ABAO)|日本支部 Association for the Board of Aligner Orthodontics の公式サイトをご参考にしてください。
矯正治療の流れと時期ごとの見方
矯正治療は治療前に初診相談を経て精密検査へと向かい、診断・コンサルテーションを行った後でようやく動的矯正治療(歯が動いている時期)が開始されます。動的矯正治療が終わってからは保定治療が必要になります。保定は矯正治療のうちの最も大切な最終処置で、動的治療を第一の治療(primary treatment)というのに対して、第二の治療(secondary treatment)と言われています。
この保定の成否が矯正治療の成否ををも決定するとも言えます。
初診相談から精密検査まで
最適な歯列矯正治療を行うためには、治療を開始する前にその症例における治療目標と治療方針の決定、治療術式の選択、治療経過の予測と予後の推定までも含めた正確な診断が不可欠です。このためには精密検査を行い症例の現在の実態や、原因と考えられる要素の正確な把握、診断に必要な資料を系統的に収集、検査を行う必要があります。
精密検査の項目
1)全身的検査
2)顔面写真:①正貌の観察 ②射位の観察 ③側貌の観察
3)口腔内写真
4)口腔模型:①模型の観察 ②模型計測
5)予測模型(セットアップモデル)
6)X線検査:①歯、顎のX線検査 ②頭部X線規格写真の診査 ③その他X線写真
診断・コンサルテーションから治療開始まで
精密検査の資料をもとに、その症例における治療目標と治療方針の決定、治療術式の選択、治療経過の予測と予後の推定までも含めた診断を行い、コンサルテーションにて患者様への説明を行います。コンサルテーションを行い契約が締結されるといよいよ矯正治療開始となります。
歯が動いている時期(動的治療期間)
マルチブラケット矯正ではワイヤーを通して持続的に歯に矯正力を作用させることで、歯を目的の方向へ誘導します。ワイヤーが元の形状に戻ろうとする力(弾性)を利用して、歯根膜に骨の吸収と形成を促し、歯を移動させます。
マウスピース矯正ではアライナーを通して持続的に歯に矯正力を作用させることで、歯を目的の方向へ誘導します。現在の歯並びから約0.25mmあるいは1~2度ほど歯を移動動させたアライナーを装着することで歯根膜に骨の吸収と形成を促し、歯を移動させます。
保定に入ってから(保定治療期間)
保定とは、歯列矯正治療によって位置異常の歯を移動させた後、すべてのその周囲組織が新しい条件に適応するように構造的及び機能的変化が終了するまで目的とする位置に歯、あるいは顎を保持しておくことを言います。
保定は矯正治療のうちの最も大切な最終処置で、動的治療を第一の治療(primary treatment)というのに対して、第二の治療(secondary treatment)と言われており、この保定の成否が矯正治療の成否ををも決定すると言えます。
大学病院の矯正科などでも2年程度の保定治療が推奨されております。
期間で後悔しないための確認点
矯正治療における動的治療期間の際中に初診相談に来られる方も少なくありません。これらの多くの場合は担当する矯正歯科医師と事前に治療計画の共有が不十分である場合がほとんどだと思われます。
矯正治療前に聞いておきたいこと
歯列矯正は開始する時期や治療の内容から早期矯正(1期治療)、本格矯正(2期治療)、成人矯正の3つに分けられると説明させていただきました。そして、それぞれによって動的治療期間の目安は異なります。また、部分矯正か全顎矯正かによっても動的治療期間はことなります。歯列矯正にかかる動的治療期間はあくまでも目安であり、症例の難易度や抜歯の有無で動的治療期間は異なります。さらには、マウスピース矯正では装置の装着時間によっても動的治療期間は異なります。
コンサルテーションにてご自身やお子様の治療が上記のどこに当てはまるのかを確認し、治療計画や治療期間を担当矯正歯科医師と共有することが大切です。
結婚式や転勤など予定との合わせ方
「結婚式の前までに歯並びをきれいにしたい」という患者さんはとても多くいらっしゃいます。しかし、結婚式まで1年を切って相談に来られる方も少なくありません。
結婚式までに見た目をきれいにして、結婚式後にかみ合わせを整える
インビザラインをはじめとするマウスピース矯正では、歯にマルチブラケットを設置するワイヤー矯正と違い着脱が可能という大きなメリットがあります。このため結婚式までに歯並びをきれいに見せる治療を進めておいて、式の直前にすべての治療をストップしてホワイトニングを行い、素敵な笑顔で結婚式を迎えていただくことができます。式が終わり次第、改めて新しいインビザライン・アライナー※を作成しかみ合わせや細部の矯正治療を行っていくという患者様は多くいらっしゃいます。
※インビザライン・アライナーとはインビザラインシステムで使用する透明なマウスピース型矯正装置を指します。
転勤や引っ越しなどの予定がある方の矯正治療
矯正治療は実際に歯を動かす期間(動的治療期間)と保定治療期間とに分けられるとご説明しました。
転勤や引っ越しの場合、歯にマルチブラケットを設置するワイヤー矯正では動的治療期間が終了するまでは「転医」は困難ですが、インビザライン矯正では別のインビザラインドクターに「転医」できるシステムが存在しており、比較的容易に手続きを行うことが可能です。
その他関連記事:
・矯正歯科アラインクチュールの治療の流れ
・費用・お支払い方法
監修者
医療法⼈きらめき 理事⻑
矯正歯科アラインクチュール名古屋栄院 院⻑
インビザライン社ファルカルティ* ※公認指導医
インビザラインダイアンモンドプロバイダ ※8年連続
インビザラインファースト部門世界シェア第1位 ※2019年
所属学会:日本矯正歯科学会/日本成人矯正歯科学会/日本小児歯科学会
⽵内 敬輔 Keisuke Takeuchi
愛知学院大学歯学部卒業後、北海道の矯正歯科にて研修を積み、2004年に愛知県にて子供向けの矯正歯科/小児歯科を開業。2014年にインビザライン・システムのライセンスを取得し、2015年に名古屋市では初となるマウスピース専門の矯正歯科アラインクチュール名古屋栄院をオープン。また、2019年には矯正歯科アラインクチュール東京銀座院もオープンした。20年以上の歯列矯正治療の経験を持ち、インビザライン・システム3,600症例を含む6,600症例(2026年2月現在)を手がけており、2019年には子供向けのインビザライン・ファースト部門で16万人を超えるドクターの中で世界シェア第1位を獲得している。その経験の豊富さから日本だけでなく海外の歯科医師たちに対し歯列矯正治療及びインビザライン・システムの教育や講演を多数行なっており、2021年よりインビザライン社のファカルティを務めている。 *インビザライン社カファルティとは インビザライン矯正に携わる歯科医師に対し、歯列矯正治療およびインビザライン・システムについての教育・指導を⾏う国内25名のみの公認指導医
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